ファンが選ぶ「人気の国」堂々の第1位なのも頷ける話。
本当に、文字通り、優しい国でした。
※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
あらすじ
キノとエルメスは、ある国を訪れようとしていた。
その国は、「旅人に対してとても冷たい」として、旅人たちの間では非常に評判の悪い国だった。だがキノは、「そこまで言われる国とはどんなものか見てみたい」と、その国を訪れることにしたのだ。
だが、いざ到着したその国は、噂とは全く逆の、とても親切な国だった。キノは、この国のさくらという少女に、国の中を案内してもらうことになる。どこまでも優しいその国の人々に、キノとエルメスは、どこかで道を間違えたのかと訝しむのだが……。
感想
運命を受け入れるということ
もともと、この話は昔原作を読んでて、オチまで知っていたのですが、それでもやはり胸に来るものがありました。アニメで初めて知った人はどう感じたのでしょうか。
寓話的というか風刺的というか、「キノの旅」に出てくる国はどれも一筋縄では行かない国ばかりなので、この国も何か裏があるんだろうと思って原作を読んでいましたが、終盤の展開は本当に衝撃を受けたのを覚えています。
瞬く間に国を飲み込んでいく火砕流を目にしての、キノの「ボクにできることはある?」に対する、エルメスの「ないよ」(即答)が本っ当にもうね……もうね……。
そして英題の「Tomorrow Never Comes.」ですよ……。
時雨沢先生が付ける英題ほんっとにエグいんですよ……。・゚・(ノД`)・゚・。
――こうなると分かっていて、国に留まり、それを受け入れるなんて。
しかも、最後のその瞬間まで、いつも通りの生活を続けて、終わるなんて。
もしも自分があの国の住人だったら、そんな覚悟を持てたでしょうか。
あと数日で国ごと滅びると分かっていて、あんな風に振舞えたでしょうか。
……でも、確かに、国を捨てたところで、行くあてなどなかったのでしょう。
他の国に行くにしても、言葉も通じないでしょうし*1、全員を受け入れてもらえるわけもないだろうし。
ならば最後まで、先祖の代から暮らしてきたこの国で、と。
あんな小さな、12にも満たない女の子までが、そんな覚悟をしてみせる国。
ただただ、凄い、という言葉しか思いつきません。
キノが訪れてくれて本当に良かった。。。
※さくらの母親は「彼女は知らない」と言っていたけれど、さくらがあの種を「自分には必要ないから」とキノに託したってことは、彼女もまた自分の運命を分かっていたわけで……。これを悟った時のキノの「あぁ……!」が本当にキツかった……。
銃器店の店主
キノのパースエイダーを修理し、なおかつ、自身が持つパースエイダー「森の人」をキノに託した初老の男性。
あれ、確か、「歴史のある国」等で師匠の相棒を務めていた男性なんですよね。
あの後、どこかで師匠と別れて、この国に住み着いたんですね。
そして数十年後、「それ」が起こる直前になって、見覚えのある銃を持つキノがやって来る……。
なんて数奇な巡り合わせなんでしょうか。
おそらく、彼もまた、あの火砕流に飲み込まれることを受け入れたのでしょう。
原作にも度々登場する彼の最期が、まさかこんな形だとは。
……しかし、彼がいつからこの国で暮らし始めたのかはわかりませんが、その頃のこの国は「旅人にひどく冷たい」国だったはず。その国を永住の地に選び、運命を共にすることを選んだ理由は何だったのでしょう。
もしかして、元々ここが彼の母国だった?のかな?
この「優しい国」、原作では2巻収録とのこと。
こちらもぜひおすすめです。
キノの旅II the Beautiful World (電撃文庫)
- 作者: 時雨沢恵一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/11/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
*1:まあ、キノの旅の世界に関しては、言語の壁はなさそうだけど。それともキノが世界共通的な言語を覚えてるのかな