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【感想】アニメ「キノの旅」第11話「大人の国」

一体、これを神回と言わずして何と言うの。

※以下、今回及び前回「優しい国」のネタバレを含みますのでご注意ください。

あらすじ

――ある日、ある少女は、自らの国を訪れた旅人に出会う。
「キノ」と名乗ったその旅人は、少女の両親が経営する宿屋に泊まることになり、少女も、次第に旅人と打ち解けていった。
そして、少女は、旅人にこの国のしきたりについて語る。

この国では、子供は12歳になると皆、大人になるための「手術」を受ける。
そうすれば、彼らはつらい仕事でも続けられる「大人」になるのだ。
そして、「大人」は親の職業を継いで生きていくのだ。

それがこの国のしきたりであり、少女も数日後にはその運命を受け入れるはずだった。
少女は、それが当然のことだと思っていた。

だが、そんな彼女に返された旅人の言葉は、
彼女の価値観を、そして人生を、大きく揺るがすことになる……。

感想

「優しい国」との対比が凄すぎる

前回の「優しい国」同様、この話も昔原作を読んでて、オチまで知っていたのですが、それでもこれは……これは……本当に凄まじかった。

何が凄まじいって、この話を「優しい国」のすぐ後に持ってきたってこと。

宿屋の娘で、花の名前を持ち、もうすぐ12歳になる女の子。
運命の日の直前に「キノ」と出会い、
運命の分かれ道となる選択を迫られて、

「優しい国」の少女は残ることを選び、
「大人の国」の少女は離れることを選んだ。

その結果まで含めて、なんという対比なのでしょう……。

これを踏まえて「優しい国」を見返すと、本当に言葉になりません。
「優しい国」の少女に出会った時の、そして、彼女が自らの意思で「残る」ことを選択したと知った時の、キノの心情はいかなるものだったのか。

もうひとりの自分が辿っていたかもしれない、もうひとつの結末。
それを目の当たりにして、ただ見ているしかなかった、キノの心情たるや――。
うああ……。

子供は親の所有物なんかじゃない

「良い子」というのは、「大人にとって都合の『良い子』」のことだ――と、どこかで聞いたことがありますが。
この国の人々にとってはまさにそうだったのでしょう。

子供とは親の所有物であり、親の言うことを聞くのが当然だと思っている。
自分たちの意に沿わない行動をすれば、途端に手のひらを返して怒鳴りつけ、周りの大人に謝りながら、「お前が馬鹿なことをするから」と罵る。
あげく、そんな「出来損ない」は処分すべきとして、殺そうとする――。

まがりなりにも12年育ててきたはずの我が子を、あの発言1つでブチ切れて、しまいには笑って殺そうとする父親。
それを止めようともしない母親、そして周りの「大人」たち。
はっきり言って、「キノの旅」における国々の中でも、トップレベルで狂っている国ではないでしょうか。

自然な成長ではなく、手術という「強制」によって大人にさせられた人々の国。
子供の意思など全く無視し、自分たちの保身と賞賛しか考えない人々の国。
自分たちの意に沿わず、自由に生きようとする人間に対して、存在を否定するレベルで感情的に拒絶する人々の国*1

「大人の国」なんて言うけど、
本当は「大人」なんかひとりも居ない国、だったのかも。
……そういう意味では、あの「大人」たちも、国による被害者だったのかもですね。


子供は親の所有物なんかじゃない。

人間は自分の生きる道を自由に決めることができるし、
自分を取り囲む壁の向こうには、見たこともない世界が広がっている。


それを、これでもかというほど象徴的に描き切った、まさに神回でした。

赤い花畑

冒頭とラストを飾った赤い花畑。
あの花畑があったのはキノの故郷、大人の国のわりと近くだったはず。
あれは、数年の時を経て、キノが故郷の近くに立ち寄ったってことなのかな。

優しい国は滅びましたが、
大人の国は、さて、どうなったのでしょうね。

それにしてもあの花畑の描写、そしてキノの歌、良かったなあ……。

キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫 し 8-1)

キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫 し 8-1)

▼前回
akirwn.hatenablog.com

▼次回
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*1:おそらくあれは嫉妬も入ってたのだろうなあ。自分たちは自由に生きられなかったのに何でお前だけ、って……。