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【感想】五代ゆう「クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー」(ネタバレ)

ゲーム「DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー」の原案者、五代ゆうさんによる小説版アバチュ、全5巻読了しました!

ゲーム版に負けず劣らず、めっっっちゃくちゃ面白かったです。濃かった……!壮大だった……!

というわけで、感想をつらつら綴っていきたいと思います\( ̄▽ ̄ )

※以下、ゲーム版、小説版両方のネタバレを含みますので注意!

原案小説でありノベライズではない

あとがきにて五代さんが明言されているとおり、この小説はゲームの「原案」であり、ゲーム版とは明らかに違う展開や設定がなされていました。

悪魔化の進行を食い止める術がセラの歌ではなく血だったり、ゲームでは死ぬはずだったキャラが(そこでは)死ななかったり、同一人物のはずのキャラが別人だったりするし、ラストダンジョン(?)もラスボス(?)も違うし、新キャラ出てくるし。

さらには、ヒートがシヴァに、サーフがヴィシュヌになるし、最後に一体化する方法が「喰らう」(!)だし。しかも、喰らった後も、その魂は喰らった者のなかで意識を持っているようで(あのふたりが特別なのかもしれないけれど)。なんか、某吸血鬼漫画の婦警と傭兵を彷彿とさせたりさせなかったり。

でも、ゲーム版と似通っていたり、ゲーム版の補完になっている場所もあって。

特に、キュヴィエ症候群がなぜ「生物が結晶化する」病なのか、何のために<神>がキュヴィエ症候群をもたらしたのか、この小説版ではきっちりその理由が描かれていて、うわあああなるほどそういうことか!と合点が行きました。EGGこっわ!((((;゚Д゚))))

キャラ別感想

サーフ

ゲーム版と小説版でキャラ違ったランキングぶっちぎり第1位(?)。
ゲーム版ではひたすら無口で表情も乏しい彼でしたが、小説版の彼は普通に喋るわ笑うわ怒鳴るわ頭撫でてあげるわと、とても面倒見が良く、かつ熱いリーダーを務めてました。いや、ゲーム版の彼もリーダーだったはずなんだけども、無口なんで存在感が(ry

ラストはゲーム版と同じというか、いや、逆というべきか。同じ一体化でもこっちのほうが受け入れやすかったです。ゲーム版のセラフはやっぱりどうも受け入れづらかったなぁ……。

セラ

ゲーム版の彼女も凄かったけど、小説版のテクノシャーマンはもっと凄かった。マクロ的量子存在としてどこにでも行けるし何でも生み出せるって( ̄▽ ̄;) 何でも具現化できるその力が、ブラフマー(創造)としてみなされたわけか。

当時何も知らない(認知できない)状態だったとはいえ、あれだけの人の死を招いたというのは、並の人間では受け入れることすらできないレベル。それを受け入れて、肉体的にも精神的にも耐え難い苦痛に耐え続け、命を削りきって人々を救おうとした彼女は、人間でありながら確かに女神でした。

ヒート

ゲーム版では「結局何がしたかったんだ?」的キャラでしたが、小説版で補完。
……でもなぁ……。終盤「仲間思いの良いやつ」扱いされてましたけど、ザ・シティ消滅させたのはさすがにやりすぎだったんじゃないのかしら。

自分が造られた存在であることが許せない、そんなことをした協会も人間もこの世界も滅ぼしてやる、という理由で暴れまわった点では、ぶっちゃけシンと同じでは。ヒート自体は嫌いではないんだけど、サーフとセラはともかく、彼まで三位一体で神様化したのはどうよと思ってしまったり。まあ、それが破壊を司るシヴァの側面なんだろうし、あそこまで来てヒートだけ外すわけにもいかないんですけども。

「生きながら地獄を見続けるより一思いに殺して楽にさせてやる」ことが、彼なりにできる「救済」だったのかもしれませんが、それだって人々がヒートに頼んだわけでもないだろうし、彼のエゴでしかなかったような気がします。……というのは、わたしが「飼われている」側に近い存在だから思うことかもしれませんが。

アルジラ

主要メンバーの中では、ヒートと同様さほどキャラが違わなかったひとり。ただ、アートマ能力が地変属性じゃなく重力を操る力になってたのはびっくりしました。
最後はジナーナに会えたのかなあ。

ゲイル

ゲーム版と小説版でキャラ違ったランキング第2位。
一人称が「私」で、サーフのことを「あなた」と呼ぶ参謀タイプ。その特性上、リーダーに依存しがちなタイプで、いつも同行させてもらえないことに次第に苛立ちを隠せなくなったり、サーフを殺した(と思わせた)ヒートに問答無用でガチギレしたり。ヤンデレ女房役こええええ!!( ̄□ ̄;)

そのフードは、頭の中の電子機器を保護するためのものだったのね。
都市全体のネットワーク乗っ取るとかアルダーの能力を再現するとか、参謀タイプ恐るべし。

終盤、エンジェルを救ったのにはちょっと意外でした。前世(?)で恋人同士だった設定は小説版ではなかったのに、「生きる意味とは何か」という問いが、ここまでふたりの間に縁を作るとは。ああ、あと「依存してた対象がいなくなったもの」同士ってのもあるのか。

シエロ

ゲーム版よりだいぶ子供っぽさが増した感じ。ゲーム版アバチュ2での超男前なイメージがあったせいか、「ほめてほめて」には正直面食らいました( ̄▽ ̄;)

エンブリオンの主要メンバーの中で唯一、そのモデルについてゲームでほとんど語られなかったキャラでしたが、小説版ではがっつり語られてましたね。きつい人生の末にきつい最期だったんだなあ。いや、カズキがいただけまだ救われたのか……。

シン・ミナセ(水無瀬 眞)

サーフのモデルにして、諸々の悲劇の元凶。まさに悪魔。
必要悪、ということになるんでしょうか。

終始、もう本当に「シンてめえええこのやろおおお!!!」と殴りたいほどの悪魔っぷりでしたが、彼が生まれなければ、あんな風に歪んで大悪を犯さなければ、一幾を巻き込まなければ、あの結末には至らず、世界はいずれ滅んでいたわけで。

その出自や育ちゆえに、憎悪という感情は人一倍持っているのに、愛情を理解していなかったのはただ哀れ。あんなことしてたらそりゃあ誰もあなたを愛さないよ、わからんのか、と思うけど、わからなかったんだろうなあ。ましてや自分を模した「人形」にすぎないサーフが皆から慕われ愛されているのを見たら、そりゃ憎むわなぁ……。

アルダーになられたときには唖然としました。あんたがなるんかい!( ̄▽ ̄;)

シンという名前は「罪」とかけてるのかな、とかふと思ったり。
サーフの名前の由来は何なんだろう。彼の綴りは「serph」だけど、元々は「surf」とかで、「水無瀬」の「水」から取ったんでしょうか。

カズキ・ホムラ(穂村 一幾)

ヒートのモデルにして、<神>を完全に狂わせた男。いや、あんなことが立て続けに起こったら、そりゃあどうしようもないよね……。彼はあの後、眞や螢と会えたんだろうか。
ホムラは「焔」、そこからヒートという名前が生まれたのかな。

マダム・キュヴィエ

ゲーム版と同じ……ように見せかけて、実際は遥かに狡猾で傲慢な人でした。人類の救済に生涯を捧げ続け、そして疲れ果てた女性。でも、科学者としてのその使命ゆえに、自ら死を選ぶような選択肢はありえなかったのでしょう。エンジェルに撃たれてようやく解放された、のかな。

いち科学者に過ぎなかった彼女が世界の頂点に昇り詰める経緯は、見てみたいような、見たくないような。ありとあらゆる人間の愚かしさを見るのと同義になりそう。。。

エンジェル

ゲーム版と小説版でキャラ違ったランキング第3位。
絶対三界輪廻なんかくれないタイプ( ̄▽ ̄;)
1位と2位もそうですが、小説版のあとにゲーム版をやったら違和感すごいだろうなあ。

ヒートと同じく、ゲーム版では「結局何がしたかったんだ?」的キャラでしたが、小説版では彼/彼女の目的ははっきりと明言されていました。ただ、ゲーム版とは明らかに思考も性格も違うっぽいので、ゲーム版で何がしたかったのかは結局不明。

アートマ(本質)が「ルシファー」、堕天使だったというのは痛烈な皮肉。最後にセラのもとへ向かってきた理由は、フレッドの言った通りだと信じたい。神のもとには戻れなかったけど、ゲイルと連れ添えて救われたなら良かった。

人類の進化の果ては「神」なのか

地球上の生命の中で、人類だけが<神>を知り、信仰するほどの知性を得た。そして、人々は戦争や災害などありとあらゆる苦しみを乗り越えてさらに進化し、やがて進化の終着点、オメガ点に達する。そこに至った人類はもはや神に等しく、あらゆる時空を超えて遍在することができる。どこにでも、いつにでも、過去にだって。

神になった人間は、過去に行って、苦しんでいる人々を救うこともできる。けれど、親が何でも助けてあげていては子供は成長できない。幼い子供が、転び、痛みを訴えながらも歩こうとするのをただ見守るように、神もまた、我々人類が苦しみながら前に進むのを、同じく苦しみながら見守っている。かつての【自分たち】がそうであったから。

神に等しい存在となった【彼ら】は、遥か未来から過去へ現れ、幼い子供たちを見守り、どうしても詰みそうな時に限って手を貸しながら導いていく。そして、ついに自分たちのもとへ辿り着いた子供たちと一体化し、子供たちは遥か未来=過去の自分たちを見守り始める――。

ふ、深い……。何その無限ルーp(ry

わたしたちの前には気が遠くなるような数の生命が生まれて死に、わたしたちの後にも何百何千億もの命が続く。そうして積み重ねられた「生(カルマ)」の先、わたしたちの子孫はどんな進化を遂げていくのでしょう。

ティヤール・ド・シャルダン『現象としての人間』、機会があれば読んでみたいなあ。


いやー、語り始めたらきりがないので一旦終わります。
長々と書きましたが結論はアレだ、

たった1つの情報(コトバ)で充分だ。


アバチュはいいぞ!(了)


クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー? (ハヤカワ文庫JA)

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現象としての人間 [新版]

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