【感想】映画「ちはやふる～上の句～」（ネタバレ）

金曜ロードSHOW!にて初見。
これほど王道の学園青春スポ根ものを見たのはいつぶりだろう。
千早も太一も良かったけれど、でも真の主人公は駒野だったと思うんだ、僕は。

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

あらすじ
感想
おわりに

あらすじ

高校に入学した真島太一（野村周平）は、そこで幼なじみの綾瀬千早（広瀬すず）と数年ぶりの再会を果たす。彼女は、幼い頃に交わしたある約束を守るため、競技かるたに情熱のすべてを捧げ、高校でも競技かるた部を作ろうとしていた。その情熱に押された太一をはじめ、どうにか5人の部員が集まり結成された競技かるた部は、都大会優勝目指して猛特訓を始めるのだが……。

感想

若手俳優陣による眩しい青春ストーリー

今をときめく若手俳優陣、広瀬すず、野村周平、新田真剣佑らによる、青春恋愛かるた映画。
……のわりには、真剣佑くんの出番はかなり少なかったけど。彼は「下の句」編で本領発揮してくるのかな？
この作品の真剣佑くんは役柄のせいもあってか超あどけなく、とてもじゃないけど「トドメの接吻」の尊と同一人物には見えませんでした。すげえ……。

超王道の青春スポ根もの、そこにこれまた超王道の三角関係なんかも絡んできたりして、いやー眩しいなー、青春だなーと思いながら見ていました。
広瀬すずちゃんは本当に可愛いなあ。
ロングにすると、やっぱり面影がお姉さんとそっくりになってきますね。

競技かるた部の面々も超個性豊かで、見ていてまったく飽きず。
経験者組3名もさることながら、上白石萌音さん演じる日本文化ラブの大江奏ちゃんや、森永悠希さん演じる秀才キャラの駒野勉くんが超良かったです。
……ていうか……。

主人公は駒野でしょう？

いや、本当に、作中一番成長したのはこの子でしょう。

最初は斜に構えまくって周囲とも距離を置きまくってて、部活にもまともに参加せず。でも千早の「机くんしかいないの！」という言葉に、初めて自分の価値を認められたと思えて、以来合宿にも練習にも付き合うようになって。

練習試合でボロ負けした経験者組に発破かけて、皆の行動パターンを見える化するアプリまで作っちゃって、それを褒められて、超楽しそうにしてて。

でも、いかんせん経験の少なさゆえに試合ではなかなか勝てなくて、自信をなくし始めていたところに、トドメと言わんばかりに肉まん君が「向こうの強い奴に駒野をあてて俺たち3人が3勝すればいい」なんて言いやがったものだから（あれは本当空気読めよお前と思った）、そりゃ打ちのめされますよ。試合も放棄しちゃいますよ。

「数合わせだったんだろ！君じゃなきゃだめだとか言っといて！」
「前みたいにひとりでいれば、こんな気持ちにならなかったのに！」

なんだこの主人公！　
碇シンジか君は！

それでも、偶然千早が取った「はなよりほかにしるひともなし」の札、そしてそれについての千早の言葉が、また彼を奮い立たせるわけですよ。

もろともに　あはれと思へ　山桜
花より外に　知る人もなし

花の他に自分を理解してくれる人もいないという寂しさを詠んだ歌。
『でも、わたしには強い絆の歌に聞こえる。
　あなたがいれば、わたしはがんばれる。
　だから、もっと、もっと深くわかりあいたいって。』

確かCMでも使われてた「あなたがいれば、わたしはがんばれる」のフレーズ。
ここで「あなた」として示唆的に演出されたのは、太一でもなく新でもなく、駒野だったんですよ！！

なんだこの主人公！！！（2回目）

実際は、千早は特定の誰かに向けて言ったわけじゃなく、駒野が勝手に解釈しただけなんだけど。でもあの一連の演出として、あのフレーズが駒野のために使われたのは明らかでしょう。いやもうどう考えても彼が主人公だろ！
これで彼も千早に惚れて、太一と新と3人で千早争奪戦になるんだろ！　太一と新が相手では彼に勝ち目はないかもだけど全力で応援するよ！　がんばれ駒野ーーー！！

……それにしても、千早が覚醒するやいなや、千早どころか全員一気に札を取り出して、駒野まで1枚きっちり札を取ってたのは、思わずご都合主義だなあと思ってしまったけど。まあ、そこも含めて王道ですよね(￣▽￣ )

太一くんの成長も良かった

そしてもうひとり、今作で大きな成長を遂げたのが太一くん。
競技かるたの経験者ながら、どういうわけか運命戦の勝負にはめっぽう弱く、その勝率たるや、かるたの神様に愛されていないとすら称されるほど。

それは、小さい頃、千早に嫌われたくなくて、新のメガネを盗んだから。
それを、かるたの神様に見られたから。
だから、見放された。

もう今更何をしても千早や新には届かないのかと嘆く彼に、國村隼さん演じる原田先生が、「このたびは」の歌を引用しながら返していた言葉が良かったです。

『"青春を全部賭けたって強くなれない"？
　賭けてから言いなさい』

なんという名言だ……。
……だよなあ、人事を尽くして天命を待つってそういうことだよね……。

勝てないが故の悩みを知っているから、太一だけが駒野の苦悩にもちゃんと反応してて、彼の嘆きにもちゃんと返していて。
そして、

「才能なんて俺だってねえよ、それでもやってんだ」
「そうすればいつか超えられる気がするから」

ですよ！
立ち向かってるなあ……いいなあ……。
最初から最強のキャラよりこういうキャラのほうが好きだなあ……。
※いや、太一くんもスペック的には容姿端麗スポーツ万能頭脳明晰お金持ちという超最強キャラらしいんだけど……そんな最強スペックを持ちながら、ただひとつ自分が望むかるたで勝てないゆえの劣等感、だからこそのあのメガネ事件だった、のかな。

最後の1戦、勝敗は太一の運命戦に。
なるほど、ここでかるたの神様が微笑んで太一の自陣の札が詠まれるんですねわかります……と思いきや、太一くんは自陣の札が詠まれることなど無いと踏んで、まさかの敵陣狙いに。それに焦った相手がお手つきをやらかして、見事太一の勝利に！　うおおそうくるのか！
でも、結局、自陣の札は詠まれずじまいなんですよね。
神様はまだ振り向いてない……のか？

新の携帯の番号を千早に伝え、新本人にもあのときのことを告白し、その上で千早のことを好きなこと、新を倒すことを宣言した太一くん。
がんばれー！　神様に認めてもらえるその日までー！