【感想】映画「昼顔」（ネタバレ）

地上波初放送とのことだったので視聴。
……週の始まり、月曜日の夜に観るには、あまりに重たい映画でした。
なんでよりにもよって月曜に？と思ったけど、後々知った話によると、放送日の6月25日の誕生花が昼顔だったのだそうで。なるほどなあ。

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

あらすじ

北野裕一郎（斎藤工）との許されざる恋、そして別れから3年――。離婚して独りとなり、かの街を離れた紗和（上戸彩）は、海沿いの小さな町で暮らしていた。だが、いかなる運命の悪戯か、その町の近くでホタルについての講演が催されることになり、講師として北野が訪れることになる。会ってはいけないと知りながら、北野に会いたい気持ちを抑えられず、会場に向かってしまう紗和。そして、ふたりは3年振りの再会を果たしてしまうのだが……。

感想

「昼顔」といえば、2014年の木曜22時台に放送されていた、不倫をテーマにしたテレビドラマ。清純派女優として人気を博してきた上戸彩さんがまさかの不倫妻を演じるとして話題になったドラマでもあり、今や超人気俳優になった斎藤工氏がブレイクするきっかけになったドラマでもあります。もうね、ドラマ版からして、伊藤歩さん演じる乃里子が怖かったのなんの。※FF7のティファの中の人だぞ……？

そして、作中でもリアルでも3年の月日を経て公開されたのが、この劇場版。
二度と会うはずのなかったふたりが、再び出会ってしまったことによる悲劇。

もう会ってはいけない、話をしてもいけない、連絡先を交換してもいけない。そう分かっていても、互いの気持ちを止められなかった紗和と北野先生。乃里子に見つかり問い質されてもなお止まれずに、それどころか、まるで開き直ったかのように――そしてとても幸せそうに――いっしょに暮らし始めたのを見た時には、ああこれはバッドエンド間違いなしだと思いましたが、それにしたって、まさかここまで叩き落とすとは……。

公開当時、紗和と裕一郎の「今度こそ」のハッピーエンドを期待して観に行った方々は、果たしてどんな心境に立たされたのでしょうか。

ラストの展開について

不倫の果てに待っていたのは、まさかの北野先生の死。
最終的に勝ったのは乃里子なのか、紗和なのか。
いや、勝者など無く、登場人物全員が不幸になった、というのが事実なのでしょう。

中でも一番の被害者だったのは……やはり乃里子なんだろうなあ。
ドラマ版といい劇場版といい、北野へのその執着はまさに狂気に近かったし、紗和と北野の恋を妨げる悪者のように描かれていたけれど。

遺体を含め、北野先生の物理的なものすべては法的な妻である乃里子の手に渡り、先生と乃里子が離婚することも無くなった（紗和が先生の妻になれる機会は永久に失われた）。でも、乃里子が本当に欲しがった北野先生の愛と、そして彼との子供は、紗和のものになった。

「私が殺したと思ってるでしょう。貴女が殺したのよ」なんて、紗和に対して言っていたけれど、実際にアクセル踏み込んでガードレール突っ切ったのは他ならぬ乃里子なわけで。いくら紗和のせいだと憎んでみても、自分のやったことを完全に棚に上げて責任転嫁できるほど、おそらく乃里子は単純ではないわけで。

命こそ助かったものの、顔に残った凄惨な傷跡に、足に残った障害（あれ、いつか元に戻るのかな……）。それらを見る度に、彼女はあの瞬間を思い出すことでしょう。しかも、彼女がその時聞いた夫の最期の言葉は、「ごめん、ただ紗和が好きなんだ」なんですよね。遺体は乃里子のもとに戻っても、心は永久に乃里子のもとには戻らなくなってしまった。

裕一郎の居ない世界に耐えられないと、衝動的にマンションから飛び降りてしまうような彼女が、果たしてこの先、紗和への恨みという大きなエネルギーを抱きながらでも、生きていくことはできるのだろうか。せめて紗和のように子供を授かっていれば、まだ希望もあったかもしれないけれど……。

……なんて考えてみると、やはり彼女が最大の被害者に思えてしまうのです。
紗和と北野先生は、どれだけ愛し合ってたとしても、「不倫をした側」なわけだし。
なおかつ、紗和は何だかんだ言って、先生との子供という「未来」を手に入れたわけだし（とはいえ、待っているのは茨の道だろうけれど）。

不倫は良くない、全員が不幸になると改めて痛感させる、重たい作品でした。

ちなみに、劇場版では全く姿を見せなかったけれど、ドラマ版でのもう1つの不倫組、吉瀬美智子さん演じた利佳子と、北村一輝さん演じた修のほうはその後どうなったんでしょう。特に利佳子。あの人が何やかんやで一番元サヤにおさまったのが、ドラマ版で一番モヤモヤしたんだけど、さすがに懲りて不倫からは金輪際足を洗ったのかしら。
鈴木浩介さん演じた紗和の元旦那さんも、その後、幸が訪れてると良いのだけれど。