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【感想】山田風太郎「甲賀忍法帖」(ネタバレ)

漫画『バジリスク ~甲賀忍法帖~』のベースにもなった、忍法アクション小説。
読了したので感想など書いてみます。

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

あらすじ

古来より続く二つの忍者集団、甲賀と伊賀。長きにわたり争い続けていた両一族は、甲賀の頭領の孫・弦之介と伊賀の頭領の孫・の祝言をもって、和睦への道を歩もうとしていた。だが、その未来を引き裂くかのごとく、甲賀と伊賀は徳川家康の後継者を決めるための戦いに利用されてしまう。

甲賀と伊賀、それぞれ10名の忍者を殺し合わせる凄絶な争い。弦之介と朧、ふたりの苦悩をよそに、忍たちによる人知を超えた戦いが始まる。果たして、最後まで生き残るのは誰なのか――?

感想

アニメ「バジリスク」の弦之介&朧のキャラクターイメージは見たことがあって、忍者集団が戦う話なのは知ってる、くらいの事前知識で読み始めた作品。

今でこそ「よくある話」扱いされそうなチーム対抗のバトル物、ではありますが、Wikipedia先生によれば、どうもこの「甲賀忍法帖」こそが、その始祖的な作品なのだそうで*1
1958~1959年に連載された作品、今から60年も前の作品だと思うと、うおお……となります。山田先生すごい……!

10対10のチーム戦

全編通して行われる、総勢20名による殺し合い。非常にテンポよくスピーディーで、もう次から次へ、ばったばったと死ぬわ死ぬわ。皆あまりにもあっさり死ぬので、「えっこれ死んでなくね?大丈夫?死んだと思わせてあとから復活するパターン?」と思いながら読み進めてたんですが、天膳以外は普通に死んでましたね。天膳とか良いから丈助とか再登場して欲しかった……。

四肢がなくて腹筋で這いずるように動くとか槍一本丸々飲み込んでるとか、身体のあらゆるところから血の霧を出すとか、色っぽい感情抱いたら吐息が毒になるとか、すごいアイデア。敵の意志を奪って自害させる能力とか相手の能力完全無効化とかは近年の作品でも見るけれど。

最後は全滅ENDか、弦之介と朧だけ逃亡ENDのどちらかだろうと思ってはいたけれど……。まあ、お互い頭目の孫でいずれはそれぞれの里をまとめる立場だったろうし、ふたりだけで逃げるなんて選択肢は端からなかったのでしょうね。
「ロミオとジュリエット」はふたりの死を契機に両家和解に向かったけど、甲賀と伊賀はこの後どうなったのだろう。

バジリスク

ダブル主人公でありながら、ともに途中から視力をなくしてしまう弦之介と朧。まあ、どちらも最強の「眼」の持ち主だからなあ。彼らの「眼」が健在なままなら、他の忍者たちは手も足も出ないわけで、必要な展開だったのだろうなと(弦之介の眼のほうはまだ対処のしようがあるけど)。

何でこれの漫画版は「バジリスク」(ヨーロッパの想像上の生物、蛇の王)なんだろう、弦之介も朧も特に蛇に関連する能力じゃなくない?……と思いながら読んでいたんですが、読了後に調べたら、バジリスクは「見ただけで死をもたらす力を持っていると思われていた」のだそうで*2。なるほど。

朧ちゃんは可愛い……んだけど、もし自分が伊賀の忍者だったらこんなトップ嫌だなあ、と思いながら読んでしまってました( ̄▽ ̄;)。弦之介を殺さないといけないのにイヤイヤを繰り返すばかりか、伊賀側最強の切り札たる「破幻の瞳」を自ら封じて、わたしもう何も見たくない、見るのやめます!(意訳)なんてやられたら、そりゃ天膳もぶち切れますわ。いや、だからって天膳のやったことはまったく擁護できませんけど。朧ちゃんの気持ちもわかるんだけどね。

余談:甲賀忍法帖を奏でる音楽

ちなみにこの「甲賀忍法帖」、漫画化・アニメ化されてるのは知ってましたが、「SHINOBI-HEART UNDER BLADE-」というタイトルで映画化もされてるんですね。
ネット上での評判を見るかぎり、あまり原作ファンが満足できるものではなかったみたいですが、主題歌になった浜崎あゆみさんの「HEAVEN」は聴いたことがあって、印象に残る好きな曲でした。あれ甲賀忍法帖を歌った曲だったのか……そう言われて聴いてみると、また違った趣が。

HEAVEN

HEAVEN

主題歌といえばアニメ版「バジリスク」のオープニング曲、陰陽座の「甲賀忍法帖」も好き。こちらも原作を読んでからだと歌詞がうわああってなります。のっけから下の月とかとか出てくるし。

甲賀忍法帖

甲賀忍法帖

あと、同じく陰陽座で、スロット版「バジリスク」の主題歌「愛する者よ、死に候え」も好き。「甲賀忍法帖」は朧サイド、こちらは弦之介サイドの歌詞になってるんですね。

しかし、MVを見るに、瞬火さんの眼はほんと弦之介に匹敵するよなあ(あの眼力の強さといい凛々しすぎる眉といい)。

迦陵頻伽

迦陵頻伽

甲賀忍法帖  山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

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