土曜プレミアムにて観たので、感想など。
観たのは数回目だけど、ラストの慟哭は何度見ても切ない……。
※ネタバレ全開してますのでご注意ください。
あらすじ
ある日、花岡靖子(松雪泰子)と娘の美里は、突如アパートを訪れ暴力をふるい始めた元夫、富樫を勢い余って殺してしまう。その隣室に住んでいたのは、湯川教授(福山雅治)の同期で友人である数学教師、石神(堤真一)だった。
後日、死体が発見され、花岡親子が事件の容疑者として浮上する。しかし、彼女らには事件当日とされる12月2日、崩しようのない完璧なアリバイがあった……。
映画版ガリレオは超どシリアス
ドラマ版の「ガリレオ」は、湯川教授が黒板やら地面やらに思いきり数式を書き連ねて計算するシーンや、内海薫(柴咲コウ)とのドタバタコメディなシーンがあったりしたんですが、それらが全くなかったのが、初見で見たときに印象深かったところ。
まあ、今作のこの雰囲気で、中華料理店のシーンとかで、恒例のBGMと共に湯川先生が数式書きまくり始めても、それはそれでおかしいけれども。
天才数学者の愛
湯川教授が「天才」と認める頭脳の持ち主、石神。
数学以外のことには一切興味を示さず、自分の身なりにも全く気を遣わず、ただ人生に絶望していた彼は、自ら命を断つその寸前に、部屋を訪れた花岡親子に救われた。
あんな親子が隣に越してきて、その直後に隣室で首つり自殺が起きたとあっては、迷惑がかかると思い、自殺を踏みとどまったのでしょう。そして生活を送るうち、親子との交流が増えるうち、絶望しかなかった彼の心に光が灯ったのでしょう。
彼女たちを守るためなら、自分が罪を被ることも、無関係の死体をもう1つ用意することもいとわなかった。それは、決して許されないことだけれど、確かに「愛」だったのでしょう。
あと一歩のところだったのに
自分が犯人となるように状況証拠を揃えて自首することで、富樫殺害の罪を完全に被り、花岡親子を救おうとした石神。でも最後の最後で靖子が現れ、「自分も罪を償います」と、自らの罪を認めてしまう。
石神にしてみれば、それは絶対に「して欲しくなかった」こと。
花岡靖子が捕まれば、娘の美里も自首するでしょう。せっかく、無関係の人間をもう1人殺してまでアリバイを偽装し、靖子たちが罪に問われないよう努力を重ねたのに、靖子のその一言で計画は完全に水の泡。誰も幸せにならない。
最後の石神の「どうして」という慟哭には、その無念さがこれでもかというほど込められていて、初見で見たときは強く胸を打たれました。
隣どうしが同じ色になってはいけない
石神が挑んでいた「四色問題(四色定理)」。いかなる地図も、隣どうした異なる色になるように塗るには、4色あれば事足りる、というもの。
留置所内の天井のシミが線で結ばれ、4色に塗り分けられていく演出が印象的でした。
この四色問題、Wikipedia先生によれば、1976年に「証明」されているものの、それは当時のコンピュータを1200時間使って演算させ導き出したいわば力技であり、現在でもなおコンピュータを使わない証明は得られていないのだとか。
(四色定理 - Wikipedia)
同じくWikipedia先生によれば、数学者は数学の証明方法において華麗さを評価するそう。
(数学的な美 - Wikipedia)
証明が簡潔であればあるほど、公式がシンプルであればあるほど、その証明は美しい。
石神が四色定理の証明を「美しくない」と評したのは、コンピュータでの力技でしか解けないという現状を嘆いてのことなんですね。
「隣どうしが同じ色になってはいけない」。
天井を見上げながら石神が呟いたその言葉には、花岡靖子が石神と同じ色(=黒)になってはいけない、という意味も込められていたのかな。そう考えると最後の慟哭はやっぱり、辛いな……。
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