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【感想】映画「阪急電車 片道15分の奇跡」

阪急電車 片道15分の奇跡 [DVD]

前々から興味あった作品。
ほっこり心のあたたまる、素敵なお話でした。

※ネタバレ含みますのでご注意ください。

あらすじ

兵庫県宝塚~西宮にある、片道わずか15分の短い路線、阪急今津線。さまざまな人がそれを日常的に利用するものの、互いに関わったり影響を与えることはなく、ただ同じ電車に揺られているだけだった。ある日、さまざまな「モヤモヤ」を持つ8人の男女が今津線に乗り、それぞれ違うきっかけで会話を始めたことで、小さな「奇跡」が連続して起きていく――。

名前も知らない人達は、私の人生に何の影響ももたらさないし、私の人生も誰にも何の影響もあたえない…
世界なんて、そうやって成り立っているんだ…
そう思っていた… でも…
(公式サイト:ストーリーより)

高瀬翔子(ウェディングドレスのOL)

3年間交際し、結婚の準備までしていた彼に浮気され(しかも子供まで作られ)、別れを切り出されたOL。彼女が行った復讐は、彼らの結婚式に純白のドレスで出席すること。作戦は成功するも、帰りの電車内で感情を抑えられなくなった彼女は、「話してみない?」と声をかけてくれたおばあさんとの会話をきっかけに、自分の気持ちに整理をつけていく……。

おばあさんの助言により途中下車した駅で、ドレスを袋に入れてゴミ箱へぽい、と捨ててしまったのが印象的でした。あのままドレス姿(引出物つき)で帰宅していたら、その後の彼女の人生は全く違っていたのでしょう。気持ちの整理をきっちりつけて次に向かえる女性って素敵。

ちなみに、結婚した元カレと元カノのその後は作中では語られませんが、元カレは社内で肩身狭い思いしたろうし、元カノは姑さんからの心証最悪だろうし、もちろん結婚式を思い出すたび翔子のことも記憶に蘇るだろうし、さぞ苦労&後悔することになるでしょう。そして一方の翔子は、すっかり気持ちを切り替えて、「幸せになってやる」と前向きになっている。「幸せになることが一番の仕返し」とは良く言ったものです。

森岡ミサ(彼氏からのDVに悩む女子大生)

ルックスは完璧、でも中身はサイテーな男と付き合っていた女子大生。おばあさんの一言、そしてたまたま聞いた女子高生(悦子)の会話を受けて、ついに別れを決意。当然最低男がすんなりOKしてくれるわけはなく、修羅場な展開が待っていて、一体どうなるのかとヒヤヒヤしましたが、幼馴染の親友&そのお兄さんのおかげで無事解決。持つべきものはコワモテのお兄さんだなあ(←違う)。

幼馴染の親友が言う、「なんでもっと早く言ってくれなかったの!」が、この話のテーマにもつながってる気がします。ひとりで抱え込まれていたら友達でもなかなか気付けないし、助けてあげられない。ひとりでは解決できない悩みは誰かに相談しなくちゃ。

半年後の彼女はすっかり立ち直り、気弱なお母さんを助けてあげる姉御肌な一面も。翔子さんとはめちゃくちゃ気が合いそう。今度は良い人見つかると良いですね。

門田悦子(憧れの大学を諦めきれない女子高生)

今津線の近くにある大学に憧れつつも、担任に学力が足りないと言われてしまい、受験を諦めるか否かで悩む女子高生。あの大学を受けたい、でも望みは薄い、でも家族の事情を思うと、すべり止めのためだけに何十万もの受験料を別に出してなんて言えない。抱え込んだモヤモヤをついに彼氏の前で爆発させてしまうも、そうすることで彼氏にすべてを受け入れてもらえ、ちゃんと気持ちの整理をつけることに成功する……。

ホームで友達と話していた彼氏に関する話が間接的にミサの背中を押し、大学で圭一&美帆と交わした話が彼女自身の背中を押すことに。結局彼女は志望大学を受けた、のでしょうね。桜は果たして咲いたのか。

小坂圭一(軍事オタクな大学生)

悦子が憧れる大学に通う変わり者その1。パンク風のファッション&軍事オタクで、周囲から見事に孤立していたものの、電車内での美帆との会話をきっかけに、お付き合いする仲に。感動した時は背景に軍用機が飛んでいく素敵仕様。お似合いカップルです。

権田原美帆(野草オタクな大学生)

悦子が憧れる大学に通う変わり者その2。圭一と同じく地方出身でまわりと馴染めずにいたけれど、電車内で圭一に声をかけてみたことをきっかけに、お付き合いする仲に。感動した時は背景に草花が咲き乱れる素敵仕様。お似合いカップルです。でも命綱はやめときなさいw

伊藤康江(付き合いのランチを断れないお母さん)

ママ友からの(1回5000円もする)ランチの誘いを断りきれず、胃痛を抑えて仕方なく付き合っていたお母さん。ミサの「価値観の合わない人と無理に付き合わない方が良い」という言葉に力をもらった様子。彼女はその後、ママ友の誘いを自力で断ることができたのでしょうか。そのシーンを見てみたかった気もする。

樋口翔子(仲間はずれにされる女子小学生)

何らかの理由で、クラスメートから仲間はずれにされていた女子小学生。前半では誰にも悩みを打ち明けられず「たすけて…」と呟くだけだったのが、半年後にはかなりタフになっていて、でも強がりにすぎなくて。高瀬翔子との会話で涙し、そして笑顔になったのが印象的でした。
他の登場人物と比べて比較的さらっと流された感がありますが(公式サイトのキャスト欄にもいないし)、原作でもそうなのかしら。

荻原時江&亜美(奇跡の始まりになるおばあさん&少女)

数々の奇跡のきっかけにもなったおばあさん&少女のコンビ。
亜美の子供ならではの無邪気な発言をきっかけに、時江おばあちゃんが翔子やミサに声をかけたり、やかましく騒ぐおばさんたちに説教したり。彼女たちの行動が巡り巡ってさまざまな人達に影響を与えていったのが、良いなあ、と思いました。

そんなおばあさんにも、亡くした主人にそっくりの男性と偶然乗り合わせるという「奇跡」が。しかもその男性は昔お尻を犬に噛まれたところまでご主人と一緒で、「自分に遠慮してまわりが犬を飼わないんですよ。気を遣わなくて良いのに」という彼の言葉を受け、本当は飼いたがっていた犬を飼うことに。亜美ちゃんも、自分では犬を飼えないけど、おばあさんの犬と遊ぶことができるように。良かったね。

奇跡の始まりは誰かとの会話から

今でも、電車に乗れば誰もが携帯の画面を覗いているし、一部の乗客が大声でしゃべっていても、注意したり声をかけたりする人なんてほとんどいない。たとえ女性がウェディングドレス姿で泣いていたとしても(!)、勇気を出して話しかける人はいないでしょう。

でも、おばあさんが翔子やミサに話しかけなければ彼女たちが救われることはなく、翔子が話しかけなければ小学生の翔子ちゃんが救われることもなく、ミサとの会話を経なければ康江お母さんが決断することもなかった。美帆が圭一に話しかけなければお付き合いに発展することもなく、悦子が悩みを打ち明けなければ彼氏とのモヤモヤは晴れないままだった。

ひとりでは解決できない「モヤモヤ」は、誰かに話してしまうことで気持ちの整理をつけられたり、相手の協力を得て解決できたりする。誰かに話すことで、話を聞くことで、思ってもみなかった「奇跡」が始まる。奇跡の始まりはいつだって他人との関わりから始まる。それを学ぶことができた映画でした。

(……かといって、今のご時世、うかつに電車内で注意したりすれば逆上されて殴られたりする事件があったりするので、映画のように上手くはいかないのだろうけど。。。)

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